星降る夜に君に恋する(途中部分抜粋3) |
甘く深い口付けを交わしながら、音也はトキヤのシャツをゆっくりと開いていった。白く細い、綺麗に筋肉のついた肢体は、それだけでなんだか淫靡に見える。脇から腰へのラインは同じ男とは思えない色っぽさで、音也はごくりと生唾を飲み込んだ。 出会ったばかりの春、音也はこの腰を掴んだことがある。何も考えず、細いなあと思って掴んだのだが、今となってはよくあんなことができたものだ、と過去の自分に感心してしまう。 あの頃は恋愛感情なんて思いもしていなかったから、トキヤの肌に簡単に触れられた。手を握ったり、抱き付いたり、顔を近付けたり、その全部も、今はもう平然となんてできない。どきどきして、頭が熱くなって、でも、もっと触れたいと思う。 「ぁ……」 そっと脇を撫でて胸へ手のひらを這わせると、トキヤが小さく声を漏らした。ぞくりと走る衝動に任せ、音也は胸の突起を摘まむ。ぎゅっと目を閉じて何かに耐える表情は堪らなく可愛らしく、欲を煽った。少し強めに摘まんで指で捏ねれば、また甘い声が零れる。 「胸……気持ちいい?」 「っ……そんなこと、ありません」 「ちゃんと言わないとわからないよ。俺初めてだし、トキヤが気持ちよくなってるか確かめないと先に進めない」 「……ん、や……ぁ」 ぐりぐりと両方を同時に攻め、音也は意地悪く訊く。優しくするつもりはあるけれど、トキヤがあまりに可愛くて、いやらしくて、もっともっと苛めたくなってしまう。 「トキヤ……可愛い」 「ん……」 これ以上ないというほど顔を真っ赤にして震えているトキヤに、音也は口付けた。キスをしながら胸を指で弄ると、唇からトキヤの喘ぎが伝わる。 男に触れられても気持ち悪いだけなんじゃないか、と不安になっていた心は、トキヤのその反応で安堵した。自分自身も、トキヤの肌や唇に触れるだけで欲は増し、性器は完全に勃起している。早く繋がりたいと、体がトキヤを求めている。 「嫌なら言ってね。トキヤの嫌がることは、したくないから」 「……そんなもの、ありません」 「……」 「ないから……早く……っぁ……」 小さく返す声が健気で愛おしく、音也は首筋に顔を埋めて柔らかな肌を吸った。そんな風に言われたら、思うままに奪いたくなる。どこもかしこも唇で触れて、暴いて、自分のものにしたくなる。 それが、好きということなのだろうか。欲情と恋情の境目はあやふやで、音也にはまだよくわらない。でも、トキヤが好きで欲しいという想いが直結していることは確かだ。 「トキヤ……好き……」 はぁ、と荒い息で囁き、音也は首筋から鎖骨までを唇で撫でた。舌で濡らし、たまに強く吸って、じんわりとつく痕に心を躍らせる。 キスマークなんてつけたら怒られるだろうか、と思っても、自分のものである印をつけたくなるのが男だ。それでも見えるところはさすがに駄目だと理性が止め、シャツの襟からは見えない場所を選んで吸い上げる。 「おと、や……痕は……」 「見えないところだし、すぐ消えるくらいにするから」 吸われる感覚で気付いたのか、トキヤが切れ切れに止める言葉を紡いだ。ばれたか、と心の中で舌を出し、けれど強さを控えめにして音也はそれを続けた。 嫌なことはない、なんて可愛い隙を見せるからいけないのだ。トキヤは案外、隙が多い。自分では気付いていないが、心を開いた相手には許す範囲がものすごく 広いのだ。逆に心を開いていない相手にはガードが強すぎて、だからこうして許されていると、嬉しくて嬉しくて堪らなくなる。 「トキヤの乳首、可愛い」 「や……ぁ、ん……」 少し赤くなってぷっくり膨らんでいるそこを、音也はぺろりと舌で舐めた。ちゅう、と唇で挟んで吸うと、甘い声が上から落ちてくる。声だけで出ちゃいそうなんですけど、とやや焦り、音也はトキヤの胸を唇で愛した。 トキヤを好きだと自覚してから、最低だとわかっていながらも、彼を思って自慰をしたことが幾度もある。その想像でもトキヤは気持ちよさそうに喘いでいたが、本物はそんな想像を遥かに越えて耳と体を刺激した。 とても綺麗な歌を奏でる声は、とろけるように甘く、いやらしく、夜の闇に響き渡る。 「トキヤって……結構えっちだったんだね」 「な……、あっ……」 「えっちで可愛い」 大好き、と囁き、音也は舌で乳首を転がす。反論しようとしたらしい声はすぐにまた弱く揺れ、音也を喜ばせた。胸の周りの白にも紅い印を刻み、柔らかな肌に頬ずりをする。熱く火照った頬よりも、そこは熱を持っていた。 恥ずかしさもあるのだろうが、感じてもくれているのだろう。トキヤの欲も、さっきから音也同様反応を示している。どきどきとしながらそこへ手を伸ばすと、トキヤはびくりと体を揺らした。 「ね、脱がすから、腰あげて?」 「……は、い……」 少し間を置いてから、トキヤは小さく答えた。普段は見られない従順で素直な様子に、胸がおかしいほどときめく。知らない顔をどんどん知って、知らないトキヤをどんどん知って、好きな気持ちは留まることなく膨れ上がっていく。 「ちょ……音也、いきなり全部は……っ」 「どうせ全部脱がせるし、汚すの嫌だろ?」 「そう……ですけど……」 ベルトを緩め、下着ごとずり下した音也に、トキヤは慌てて身を起こそうとした。それを許さず、音也はトキヤを覆う全部を取り払う。 互いに体は火照っていても、外気に曝され寒いのだろう。無意識に膝頭を寄せて脚をすり合わせる仕草に気付き、音也は毛布を引き寄せると背からかぶってトキヤの脚ごと覆った。そうしてぴったりとくっついている脚を緩やかに開いていく。 「あまり……見ないで、ください」 「よく見ないと気持ちよくできないよ。ほら、力抜いて」 「……なんだか慣れてませんか、あなた」 「まさか」 開いた脚の間に身を入れてくる音也を、トキヤがやや疑いの目で見る。ははっと笑い、音也はトキヤの膝にちゅっとキスを落とした。 「初めてなんだから、慣れてるわけないよ」 「……」 「えっちするのも、誰かをこんなに好きになったのも、トキヤが初めてだよ」 「……私も、です」 深い声音で告白すると、トキヤも小さくそう返してくれた。声にならない感動が襲い、音也はトキヤの膝に額を押し付ける。 「どうか、しましたか?」 「ごめ……ちょっと……すごく嬉しくて息がつまりそうになった」 「……大袈裟ですね」 「そんなことないよ。俺には……それくらい嬉しいことなんだ」 「大袈裟……ですよ」 ふい、と照れたように顔を背けるトキヤが可愛くて、音也は頬を緩めた。大好きな人の初恋が自分だなんて、こんなに嬉しいことはない。好きになることも、体を重ねることも、自分が初めてなのだ。 誰も知らない。本当に誰も、この彼を知らない。 「だからさ、初めてだしトキヤもちょっと協力して? ほら、力抜いて」 「ぁ……」 「少し、濡れてる」 ぐい、と脚を大きく開かせ、音也はその間に顔を落とした。トキヤの性器はちゃんと勃ち上がり、その先端を透明な露で濡らしている。熱く育ったそれを手に し、音也は躊躇いなく口に含んだ。一瞬逃げるように腰が揺れたが、内腿を手のひらで宥めるように撫でると力が抜けていく。 自分と同じ、男の性器でも、抵抗はまるでなかった。口にしたら怒られるだろうから言わなかったけれど、固く熱く育っているそれはグロテスクなはずなのになんだか可愛くて、感じて濡れてくれているのが嬉しくて、嫌だなんてひとつも思わなかった。 それに、指で、舌で欲を擦ると、今まで以上に気持ちよさそうな声がトキヤの口から零れてくる。 「あっ……ぁ……んん、ぅ……」 唾液を含んだ口で性器を愛撫すると、それはより大きく育ち、熱くなった。同じものを持っているから、どこをどうされれば気持ちいいのかは大体わかる。自分がされたら気持ちいいだろうと思う行為を施せばいい。 指で根元から擦りあげ、舌で竿を撫でる。ぐちゅぐちゅと音を立てて少し激しく口淫を続けると、先端からはまた蜜がじわりと溢れた。ぴくぴくと口の中で震える性器は、快感に正直で可愛らしい。 憎まれ口を叩くトキヤも可愛いし、快楽に素直な体も可愛かった。もう全部が可愛くて、愛おしくて、どうしていいかわからなくなってしまう。 「おと……そんなに、急に……はっ、ぁ……」 脚を震わせ、トキヤは戸惑った声を上げて腰を捩じらせた。駄目、駄目、と小さく子供のように繰り返す声は、音也にはもっと、としか聞こえない。 「気持ちよかったら出してトキヤ。我慢しないで」 「ん……でもっ……ぁん、くっ……」 じゅる、と音を立てて唇で竿を撫ででから、音也は括れから先端を集中して嬲った。その速度に合わせ、根元から扱く指も激しくさせる。 「ぁん、音、也……待っ……」 止める声は掠れ、甘く伸びた。それに勢いづき、音也はより強く吸い上げ、トキヤを追い上げる。 |